PENTAX K-1のL型プレートのリプレース、アルカスイス互換カメラプレートと雲台との相性について
アルカスイス互換のカメラプレートはご存知でしょうか?
まず、カメラプレートはカメラ本体の三脚ネジの所に装着するプレートで、三脚の雲台のクイックシューへの脱着を簡単にするためのものです。雲台付きの三脚を買うとカメラプレートが付いてくると思いますが、各社それぞれの規格となっています。例えば、スリックの三脚についているカメラプレートはマンフロットの三脚では使えません。
アルカスイス・インターナショナルは雲台などを作っているメーカーです。アルカスイス・インターナショナルが作っている雲台やカメラプレートの形状を倣って、様々なメーカーが「アルカスイス互換」の雲台やカメラプレートや雲台を販売しています。現在はアルカスイス互換の製品はよく普及しており、デファクトスタンダードといってもいいのではないでしょうか。L型プレートは、雲台のクイックシュー(クランプ)の向きを変えずに縦位置撮影にも対応できるものです。
アルカスイス互換の製品同士は基本的には使えます。基本的に使えるといったのは、「アルカスイス互換」というのが実はやっかいで、カメラプレートの幅の寸法や切れ込みの角度などは各社で微妙に違いがあります。なので、アルカスイス互換の製品でもうまく取り付けられないといった「相性」の問題も起こりえます。
PENTAX K-1ではマーキンスのL型プレート(PP-K1+LP-K1)を使用しています。軽量、薄型でよいのですが、不満点がいくつかあります。
※画像はマーキンスサイトより引用
<不満点1:カメラ左側にあるコネクタカバーを開けるのがやりにくい>
イメージセンサークリーニングを行うときに、バッテリー残量を気にしなくて済むようにACアダプターを購入したのですが、DC INコネクタへのアクセスがやりにくいです。
カメラ左側にあるコネクタカバーを開ける時に指を入れるスペースがないので、指のみでコネクタカバーを開けることはまず不可能です。カメラ背面から板状のものでカバーを引っかけて開けるか、六角レンチでネジを緩めてL型プレートをずらして指が入るスペースを作る必要があります。
<不満点2:プレートが少し斜めになる>
下の画像でカメラ底面のネジの間に赤の直線で引いてみると、カメラに対してプレートが傾いているのがわかります。画像でいうとプレートの右側から左側にプレートを押しながらプレートを固定すれば真っ直ぐ取り付けることは可能ですが、ひと手間掛かってしまいます。
<不満点3:取り付けに時間がかかる、ガイド穴周辺を傷つける>
ガイドピンをカメラに差し込んでからネジでプレートを固定するので、装着するのに少し手間が掛かってしまいます。また、ガイドピンの端面が尖っているので ガイドピンを差し込むカメラ側の穴の周辺をこすって傷になってしまいました。取り付け時にはガイドピンがこすらないように注意する必要があります。
マーキンスのL型プレートの不満点を改善したくなり、他社のL型プレートを検討しました。現在、PENTAX K-1用のアルカスイス互換L型プレートはマーキンス、KIRK Enterprise Solutions(KES)、Really Right Stuff(RRS)から販売されています。ポイントとなる点を比較してみました。
<重さ>
・マーキンス(PP-K1+LP-K1)・・・69.3g(実測値)
・KIRK(BL-K1N)・・・96.2g(実測値、別売りの脱落防止ネジ含む)
・RRS(BK1-L)・・・81g(カタログ値)
KIRKが一番重いです。しかし、目くじら立てるほどの重量差ではないと思います。
<ストラップ穴>
・マーキンス(PP-K1+LP-K1)・・・あり
・KIRK(BL-K1N)・・・あり
・RRS(BK1-L)・・・なし(ブラックラピッドのストラップなどを取り付けるネジ穴はある)
ピークデザインのストラップを使っているので、ストラップ穴は必須です。ここにはピークデザインのアンカーリンクスを取り付けています。
<脱落防止ストッパー>
・マーキンス(PP-K1+LP-K1)・・・なし
・KIRK(BL-K1N)・・・あり(ネジ2個取り付け可能)
・RRS(BK1-L)・・・あり(ネジ1個取り付け可能)
脱落防止を雲台側で行うか、L型プレートで行うかの考え方の違いがあります。
ストラップ穴がない時点でRRSの選択肢はなくなったので、KIRKのBL-K1Nを購入してみました。
※画像はKIRKサイトより引用
KIRKのL型プレートBL-K1は、ガイドピンとプレート固定ネジの間隔が変わらないため、プレートの装着がスムーズです。脱落防止ネジは底面に2か所付けられるようになっていますが、側面にはネジを取り付ける場所がないので、縦位置での落下防止には対応していません。この点は少し残念です。
以下、PENTAX K-1に装着した状態です。カメラの左側面で見るとマーキンスのL型プレートと比べるとコネクタカバーとL型プレートBL-K1の間隔は少し広くなっています。左側面からコネクタカバーを開けられなくはないですが、ちょっとやりにくいといった印象です。カメラ背面側からは指が入る十分なスペースがあるので、背面側から開けるほうがやりやすいと思います。
なお、マーキンスのL型プレートはセンター位置に白いマークがありましたが、KIRKのL型プレートは凹状になっていて、他の部分と同じ色なのでちょっとわかりにくいです。そのため、センター位置に白いビニールテープを細く切って貼り付けています。
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雲台とL型プレートとの相性
雲台はマーキンスの自由雲台Q3iTR-BK ノブシュートラベラーモデルを使っています。三脚はGITZOのGT2545Tを主に使っていますが、この三脚との相性はとてもいいです。
また、マーキンスの雲台ではカメラ機材の脱落防止は雲台のストッパーピンで行います。そのため、マーキンスのL型プレートは脱落防止のネジを取り付けるようにはなっていません。対して、KIRKやRRSの自由雲台にはストッパーピンはなく、脱落防止はL型プレートに脱落防止のネジを取り付けて行います。マーキンスは雲台側で、KIRKやRRSはL型プレート側で脱落防止を行うという考え方の違いがあります。
L型プレートBL-K1N(KIRK)と自由雲台Q3iTR-BKの組み合わせてみます。横位置では自由雲台Q3iTR-BKのストッパーピンにL型プレートBL-K1N(KIRK)にあるネジ穴(下の画像の赤丸部分)がはまってしまい、ほとんど動かせなくなってしまいます。そのため横位置では光軸にきっちり合わせることはできません。また、縦位置ではストッパーピンが引っ掛かって邪魔になり光軸に合わせることが困難です。ストッパーピンをL型プレートで押さえながらセットすればできなくもないのですが、その操作も煩わしく折角のストッパーの機能も活かせません。
それでは自由雲台Q3iTR-BKのストッパーピンを外してしまえばいいかと思いましたが、これではうまくいきませんでした。脱落防止用のネジを取り付けたL型プレートBL-K1N(KIRK)では、自由雲台Q3iTR-BKのクイックシューのくぼみの深さが浅いため(約1mm)、脱落防止用のネジ(ネジの高さは約1.5mm)がクイックシューの側面に引っ掛かってしまいます。L型プレートが移動できる幅が限られてしまうため、光軸に合わせることができませんでした。
落下防止ネジを付けた状態のL型プレートBL-K1N(KIRK)とマーキンス自由雲台Q3iTR-BKの相性はよくないようです。
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クランプはレバー式?スクリューノブ式?
アルカスイスタイプの雲台のクイックシュー(クランプ)にはレバー式とスクリューノブ式の2種類があります。
レバー式ではプレートの締め付け幅を調整できるものもあるようですが、他メーカーのプレートだと締め付けたときにプレート幅が合わずにきっちり固定できないということもあるようで確認、注意が必要です。レバー式はオープン、クローズ、あっても半オープンの状態にしかできません。不意にレバーを引っかけてしまいオープン状態なってしまい、カメラ機材の脱落の心配もあります。そのようなことも考慮し、KIRKにはスクリューノブ式の雲台、クランプしかないようです。
スクリューノブ式のクランプはネジを回して締め付け幅を無段階に調整できるようになっています。いっぱいまで締め付けたときにプレート幅に合わなければスクリューノブ式でもレバー式と同じようなことが起きるのではないかと思いますが、そういう話はスクリューノブ式のクランプでは聞いたことがありません。
※画像はRRSサイトより引用
もちろん、レバー式でも同一メーカーのプレートだとプレートの寸法が合うように設計されているはずなので、レバー式を選択する場合は同一メーカーのプレートを選択すれば装着の面では問題ないと思います。
<レバー式>
利点・・・素早く脱着できるので、セッティングに時間がかからない
欠点・・・他メーカーのプレートではきっちり装着できないこともある。
不意にレバーが開いたときに脱落の可能性がある
<スクリューノブ式>
利点・・・他メーカーのプレートでも装着できる
欠点・・・レバー式と比べると脱着に時間がかかる
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L型プレートBL-K1N(KIRK)と使う自由雲台
L型プレートBL-K1N(KIRK)とマーキンスの自由雲台Q3iTR-BKは相性が良くないので、違う自由雲台を調べました。メーカーはアルカスイス・インターナショナルかKIRKかRRSかで検討しましたが、アルカスイス・インターナショナルの自由雲台は重めなのでパス、KIRKの自由雲台はあまり惹かれるものはなく、評判の良いRRSの雲台の中から選ぶことにしました。
RRSでは、
・フルサイズの自由雲台BH-55
・ミッドサイズの自由雲台BH-40
・コンパクトサイズの自由雲台BH-30
などがありますが、トラベラー2型に合いそうな自由雲台となるとサイズ、重量からBH-30になりそうですが、残念ながらBH-30はフリクションコントロールができません。サイズが大きくなってしまいますが、BH-40はフリクションコントロールができます。
RRSの自由雲台のクランプは、フルサイズとコンパクトの2種類の大きさから選べます。型番でLRがレバー式、Proがスクリューノブ式、そのあとのIIとある場合はクランプの大きさがフルサイズ、なしはコンパクトのようです。
L型プレートBL-K1N(KIRK)と自由雲台Q3iTR-BKの組み合わせでは、落下防止ネジが入るくぼみの深さが足りずに問題となっていたので、RRSに自由雲台BH-40 ProIIのクランプのくぼみの深さ(上の画像の赤線部)を問い合わせたところ1.67mmという回答が得られました。L型プレートBL-K1N(KIRK)に取り付けた落下防止ネジの突起部分の長さは約1.5mmなので、クランプとのクリアランスは大丈夫なようです。
L型プレートは雲台とは違うメーカーBL-K1N(KIRK)をの使うため、クランプタイプはスクリューノブ式、またクランプサイズはフルサイズのBH-40 ProIIを購入しました。
RRSの自由雲台BH-40 ProIIとKIRKのL型プレートBL-K1N(落下防止ネジあり)の組み合わせで問題ありませんでした。
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GITZOの三脚GT2545Tと自由雲台の組み合わせ
GITZOの三脚GT2545Tの脚を反転して折りたたむときに、マーキンスの自由雲台Q3iTR-BKとの組み合わせでは、わずかに三脚の脚が広がる程度になりますが、自由雲台Q3iTR-BKの収まりはいいと思います。
マーキンスの自由雲台Q3iTR-BKのベース直径は50mmでベース部の形状は円筒なので三脚の脚とは干渉しないようになっています。
※画像はマーキンスサイトより引用
自由雲台BH-40 ProIIのベース部は円筒状ではなく、下の画像の左側のように出っ張っている形状になっているため、この部分が邪魔になり三脚GT2545Tの脚が広がらないように折りたたむことができません。これはクランプサイズがコンパクトでも無理そうです。三脚GT2545Tの脚を反転して折りたたんで持ち運ぶときには、自由雲台BH-40 ProIIは取り付けずに別々にしたほうがよさそうです。
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まとめ
・雲台のクランプがレバー式の場合は、L型プレートと雲台のクランプは同一のメーカーにしたほうが無難
・雲台のクランプがスクリューノブ式の場合は、L型プレートと雲台のメーカーが違っても問題ないと思う
・落下防止対策(ストッパーピン)の方式の違いに注意