KIRKから発売されたレベリングベース(Tripod Leveling Base with Quick Release)はストレスフリーだった
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レベリングベースとは?
パノラマ写真を撮ったり、ビデオ撮影をする場合は、三脚が水平になっていないとカメラをパンニングしたとき水平が取れなくなり、傾いた写真や動画になってしまいます。三脚の脚の長さを調整して水平にすることはできますが、三脚を移動させるたびに三脚の脚の長さを調整して水平にするのはとても面倒ですし、正確に水平にすることはなかなか難しいです。
そのような場合に使われるのがレベリングベースです。レベリングベースを使うと三脚の水平がとれていなくても、レベリングベースを水平にすることで雲台を水平にすることができます。動画を撮るのに使われるビデオ三脚では、本格的なものだとレベリングベースが組み込まれています。写真撮影でもジッツオのシステマティックなどは三脚にハーフボールタイプのレベリングベースを組み込めるようになっています。私が主に使っている三脚は一般的な形のタイプのもので、ジッツオのトラベラー2型4段GT2545Tです。このタイプの三脚は、レベリングベースを三脚に組み込むことはできないので、三脚と雲台の間に取り付けられるタイプのレベリングベースを使う必要があります。
レベリングベースはシルイのLE-60を使っていますが、不満点もあるので使いやすいレベリングベースを検討しました。
※RRSのUniversal Leveling Base(Lever-Release Clamp)を追記。
※クランプタイプのレベリングベース RRSとKIRKの違いについてを追記。
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シルイのレベリングベースLE-60の不満点
シルイのレベリングベースLE-60を1年半ほど使っています。水平調整後にカメラがずれてしまうようなこともなく、十分な固定力があり比較的コンパクトでよかったのですが、水平を合わせるのにやりにくさを感じていました。ボール部分に塗ってあるグリスのせいなのか、レベリングベースのボール部分が動き出すまで力を掛けなければいけない感じです。また、水平調整もボール部分の動きが滑らかとは言いにくいので、キッチリと水平を合わせようとすると少し苦労していました。
レベリングベースLE-60は、チルト角度は不明(見た感じだとKIRKのレベリングベースと同程度)、高さ45mm(上部ネジ含まず)、上部直径約67mm(突起のない部分)、重さ280gです。上部のネジは1/4インチネジに3/8インチ用のアダプターが取り付けられており、細ネジか太ネジの機材を取り付けることができます。
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使いやすいレベリングベースを検討する
シルイのLE-60のように三脚と雲台の間に取り付けるタイプのレベリングベースで使いやすそうなものを調べました。最終的に候補に残ったのは、RRSとKIRKのレベリングベースです。
まずは、RRS(Really Right Stuff)のUniversal Leveling Baseです。雲台との接続がシルイのLE-60やRRSのUniversal Leveling Baseと同様の太ネジタイプと、アルカスイス互換のクランプタイプが用意されています。
三脚や雲台との接続は、シルイのLE-60と同様です。上部のネジは3/8インチの太ネジで1/4インチの機材を取り付けることはできないようです。
Universal Leveling Base(Platform with 3/8" Stud)は、チルト角度+/-15°、高さ67mm(上部ネジ含まず?)、上部直径約76mm(突起のない部分)、重さ335gです。
Universal Leveling Base(Lever-Release Clamp)は、雲台の取り付けがクランプ方式になっています。
次は、KIRKのレベリングベースです。RRSと同様に、雲台との接続が太ネジタイプとアルカスイス互換のクランプタイプが用意されています。
上部が太ネジタイプのレベリングベースは、Tripod Leveling Base with 3/8-16 studです。形状がRRSのレベリングベースと似ているので操作感は同等かなと想像できます。
Tripod Leveling Base with 3/8-16 studは、チルト角度+/-17°、高さ71.1mm(上部ネジ含まず?)、上部直径約72.4mm(突起のない部分)、重さ349gです。
そして、上部がアルカスイス互換のクランプになっているレベリングベースは、Tripod Leveling Base with Quick Releaseです。
Tripod Leveling Base with Quick releaseは、チルト角度+/-17°、高さ81.3mm、上部直径約72.4mm(突起のない部分)、重さ425gです。
上部がアルカスイス互換のクランプになっているので、雲台の底面にレベリングベースに付属しているアルカスイス互換のプレートを取り付ければネジタイプのものより簡単に雲台を取り外しできます。
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購入したレベリングベースはKIRKのアルカスイス互換クランプタイプ
シルイのレベリングベースLE-60より約26mm高く、145g重くなってしまいますが、レベリングベースへの取り付けが素早くできそうなKIRKのアルカスイス互換のクランプタイプのレベリングベースを購入してみることにしました。品名がTripod leveling base with Quick Release and (SMALL) mounting plate、型番がTLB-1QRSで、私が使っているReally Right StuffのBH-40という自由雲台のサイズに合うアルカスイス互換のプレートがセットになっているものです。なお、大型雲台用のプレートがセットになっているレベリングベースは品名がTripod leveling base with Quick Release and (LARGE) mounting plate、型番がTLB-1QRLです。こちらはRRSの自由雲台でいうとBH-55のサイズに合うプレートがセットになっているものです。
KIRKの製品は国内ではスタジオJinで取り扱いがありますが、海外から買うより割高になり、在庫がないと海外からの取り寄せになり時間がかかってしまいます。私はRRSやKIRKなどの海外製品は関税がかかっても安く買えるので、アメリカのB&Hから海外通販をするようにしています。レベリングベースTripod leveling base with Quick Release and (SMALL) mounting plateが275ドル、雲台用プレートKirk Tripod Head Quick Release Plate (Small)が19ドルです。今回もB&Hで注文しましたが、4日ほどで届きました。
予備にTripod head quick release (SMALL) plateを別に1つ購入しましたが、付属の雲台用プレートと仕様が少し違っていました。別売りの雲台用プレート(Tripod head quick release (SMALL) plate)は脱落防止ピンを取り外すことができますが、付属の雲台用プレートは脱落防止ピンが雲台用プレートと削り出しで一体になっているため、取り外すことができません。寸法的な違いはないようです。
雲台用プレートの脱落防止ピンは、レベリングベースにあるくぼみの部分にはまるようになっています。このくぼみに脱落防止ピンが引っ掛かることで雲台が外れてしまうことを防いでいます。
レベリングベースの水準器の精度も全く問題ありませんでした。このあたりの信頼感は流石です。
所有している範囲で調べてみましたが、KIRKのクランプと付属の雲台用プレートの組み合わせでは、脱落防止ピンの間隔が合わず取り付けることができないことはありませんでした。まあ、同メーカーなので当然といえば当然ですが。
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他社製のクランプなどで使う場合の注意点
他社製のクランプだと雲台用プレートの脱落防止ピンの間隔と合わず、取り付けられないものもありました。例えば、SUNWAYFOTOのパンニングベースDDH-04では、両側に設けられている脱落防止用のくぼみの間隔は最小で32mmなので、脱落防止ピンの間隔は32mm以上が必要になります。付属の雲台用プレートの脱落防止ピンの間隔は最小で27mmです。雲台用プレートの脱落防止ピンの間隔のほうが狭いので、付属の雲台用プレートを付けた雲台をこの組み合わせでは取り付けることはできません。
このように、KIRKのレベリングベースとの組み合わせだけで脱落防止ピンがが一体になっているプレートを使う分には問題ないですが、レベリングベースと雲台の間に他社製のクランプなどを使う際には、付属の雲台用プレート(脱落防止ピンを取り外すことのできない)は使えない場合もあるので注意が必要です。別売りの雲台用プレートの脱落防止ピンを取り外して使うか、脱落防止ピンの間隔が十分に広い別の雲台用プレートを用意する必要があります。
RRSの自由雲台BH-40には、底部に取り付けられる専用のアルカスイス互換のプレートが用意されています。品名はSmall Dovetail Plate for BH-40、型番はTH-DVTL-40です。このプレートは縁の部分があり、フラットになっていないので他の雲台ではちょっと使いずらくなってしまいます。
脱落防止ピンの間隔を比較すると、RRSが最小41.4mmでKIRKの最小27mmより広いです。SUNWAYFOTOのパンニングベースの脱落防止用のくぼみの間隔は最小で32mmなので、RRSの雲台用プレートは使うことができます。なお、RRSの雲台用プレートの直径は53mm、KIRKの雲台用プレートの直径はSMALLが約50mm、LARGEが約63mmです。
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レベリングベースの操作方法と空転防止
レベリングベースの下部のプレートには、レベリングベースが三脚から空転しないように固定するイモネジ用のネジ穴があります。固定レバーは半時計周りに回せばボール部分が緩み、時計回りに回せばボール部分が固定します。
空転防止用のネジ穴ですが、レベリングベースの底部は下のようになっています。直径が72.6mm、空転防止用のネジ穴までが中心から約34mmです。
GT2545Tに付属している雲台を載せる上部のプレートは、直径が約42mmです。KIRKレベリングベースの空転防止ネジ穴までの距離より小さいので、ネジを使ってレベリングベースの空転防止をすることはできません。
グランドレベルのローアングル撮影ができるように、ジッツオの三脚GT2545Tには6X Ground Level Column Kit(型番はGS2511KB)というGT2545Tに標準で付属しているセンターポールより短いセンターポールを別途購入して使っています。センターポールを伸ばすことはほぼ無いので、標準でこちらの短いセンターポールが付属していれば有難いところです。
6X Ground Level Column Kit(型番はGS2511KB)
6X Ground Level Column Kitに付属している雲台を載せる上部のプレートは、直径が約61mmと標準のものより大きいです。しかし、これもKIRKレベリングベースの空転防止ネジ穴までの距離より小さいので、ネジを使ってレベリングの空転防止をすることはできません。
なお、GT2545Tに標準で付属しているプレートと6X Ground Level Column Kitに付属しているプレートでは、雲台やレベリングベースに接する面の形状が異なっています。GT2545Tに標準で付属しているプレートは中心側がへこんでいて縁の部分が狭いですが、6X Ground Level Column Kitに付属しているプレートは、中心側がへこんでいているものの縁のフラットな部分が広いです。レベリングベース底部との接地面積が多くなり、レベリングベースが緩みにくくなると思われるので、6X Ground Level Column Kitに付属しているプレートを使っていこうかと思います。
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クランプタイプのレベリングベース RRSとKIRKの違いについて
クランプタイプのレベリングベースでは、RRSがレバータイプのクランプ、KIRKがノブタイプのクランプという違いがあります。私はノブタイプのほうが固定に関して安心できるのでKIRKのレベリングベースを購入しました。RRSのレベリングベースは、脱落防止用のへこみの形状がシンプルです。先に述べたレベリングベースの脱落防止用のへこみの間隔が短いため、雲台に取り付けるアルカスイスプレートの脱落防止ピンの間隔も気にせずに使えると思うので、KIRKのレベリングベースより汎用性の面では優れていると思います。クランプ方式にそこまで拘らないのであればRRSのレベリングベースのほうが使い勝手はいいかもしれません。
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ファーストインプレッション
シルイのレベリングベースLE-60では水平調整がやり難いと感じていましたが、KIRKのレベリングベースはどうでしょうか?
まず、固定レバーを緩めてボール部分が動き出すまでですが、KIRKのレベリングベースは、グリスが使われていないようなのでスルスルと何の抵抗もなく動き、水平出しがやりやすいです。この点はボール部分が動き出すまでに抵抗があるシルイのレベリングベースLE-60と比べて全然違います。
続いて水平出しができたらボール部分が動かないように固定しますが、シルイのレベリングベースLE-60は固定レバーを緩めたり締めるのに少し力が必要な感じです。KIRKのレベリングベースは緩めたり締めるのにそこまでの力は必要なく、少し締めるたけでボール部分が十分に固定されます。まさにストレスフリーになりました。
空転防止のネジを使わなくても問題ないようです。固定レバーを締めた後、緩める時にレベリングベースごと回ってしまうことが懸念されましたが、かなりきつく固定レバーを締めなければレベリングベースが空転してしまうこともなさそうです。
このレベリングベースはシルイのレベリングベースLE-60と比べると、大きいので若干高くなるのと重くなるのがネックですが、それを差し引いても検討する価値があると思います。