チラシの裏(仮)

主にカメラ関係の備忘録的ブログです。

パノラマ撮影について(知識編)

 パノラマ撮影について調べてみました。

 一般的にはパノラマ写真というと普通の写真より横長のものをイメージすると思います。大きく分類して、シングルロウパノラマ(single-row panorama)とマルチロウパノラマ(multi-row panorama)と呼ばれているものがあるようです。パノラマ写真は複数枚の画像をつなぎ合わせて一枚の写真にします。横方向に複数枚の画像(1xn)を繋ぎ合わせて一枚の写真とするのがシングルロウパノラマ(ロウ=行)、横方向に複数枚の画像(1xn)、さらに上方向にずらして横方向に複数枚の画像(mxn)をつなぎ合わせて一枚の写真とするのがマルチロウパノラマです。

 パノラマで撮影をすれば、標準レンズしか持っていない場合も広い範囲の写真が撮れるので広角レンズの代用になります。

 パノラマ撮影の利点として、

 ・複数枚の画像から1枚の写真を作るので高解像度な写真になる

 ・広角レンズのみで撮った時とくらべてパースのつき方がきつくならない

などが考えられます。

 一方、パノラマ撮影が向いていないのは、

 ・パノラマ撮影の範囲で移動するものがあるとき

などが考えられます。例えば、夜景に車や船のライトがあるとします。長時間露光で撮影するとライトは光の軌跡となって写りますが、パノラマ合成をするときに光の軌跡がうまくつながらない場合も出てくると思います。また別の例では、左から右に移動している犬がいると胴がすごく長くなって写ってしまうなんてことも想像できます。

 

  •  シングルロウパノラマとは?

 シングルロウパノラマは、2枚目の画像が1枚目の画像と重なるようにパン方向に少しずらして撮影していきます。この作業をn枚目の画像まで同様に行い、n枚の画像を使って1枚のパノラマ写真を作ります。

 

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シングルロウパノラマ

 

  • マルチロウパノラマとは?

 マルチロウパノラマの場合はパン方向はシングルロウパノラマの時と同様ですが、チルト方向にも1行目に重なるように少しずらして2行目の画像を撮影していきます。この作業をm行目まで同様に行い、mxn枚の画像を使って1枚のパノラマ写真を作ります。

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マルチロウパノラマ

 

  •  パノラマ写真の失敗例

 私もパノラマ撮影なら雲台をパンニングして複数枚写真を撮って、アドビのライトルームやフォトショップで合成すればいいんじゃないかと思っていました。実際、ライトルームでのパノラマ合成はよくできているので違和感なく合成できると思います。ただし、場合によっては画像と画像のつなぎ目の処理がうまくいかず「段差」として目立つことがあります。

  下の写真は複数枚の画像からアドビのライトルームでパノラマ合成したものです。

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ライトルームで合成したパノラマ写真

 

 一見すると問題ないように見えますが、白枠の部分を拡大してみます。よく見ると電線の部分のつなぎ合わせ部分が不自然で「段差」がついてしまっています。

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拡大画像


 当時はよくわからなかったのですが、その原因が視差と呼ばれるものによるようです。

 

  • 視差(パララックス:parallax)とは?

 視差とは見る角度を回転するように変えたときに、手前にある対象物と奥にある対象物の相対的な位置関係の見え方に「違い」が生じることをいいます。

 形状と長さが同じである黄色の棒と緑色の棒を並べるとします。下図はそれを俯瞰で見たものを表します。緑色の棒が黄色の棒に隠れるようにカメラをセットします。

 

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被写体が中央にある場合


  図のXマークをカメラの回転軸として左にパンニングしてみます。

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左にパンニングした場合

 左にパンニングすると画像の右側に黄色の棒が見えるようになりますが、奥にある緑色の棒の一部が黄色の棒の左側に見えるようになります。

 次にXマークをカメラの回転軸として右にパンニングしてみます。

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右にパンニングした場合

 

 画像の左側に黄色の棒が見えるようになりますが、奥にある緑色の棒の一部が黄色の棒の右側に見えるようになります。このようにパンニングしたときに中央、左、右の位置で黄色の棒と緑色の棒の見え方に違いが生じてきます。これを「視差」といいます。

 視差があるとパノラマ合成を行ったときに「ずれ」が生じてきますので、パンニングをしても視差が生じないようにしなければなりません。

 

  • 視差がない状態にするには?

 では、パンニングをしても視差がない状態にするにはどうすればよいのでしょうか?

  今度はカメラの回転軸をレンズの焦点位置に合わせてみます。

 

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被写体が中央にある場合


 レンズの焦点位置をカメラの回転軸として左にパンニングしてみます。

 

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左にパンニングした場合(焦点=回転軸)


 レンズの焦点位置を回転軸とした場合、左にパンニングすると画像の右側に黄色の棒が見えるようになりますが、奥にある緑色の棒は黄色の棒に隠れて見えなくなります。

 

 

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右にパンニングした場合(焦点=回転軸)

 

 レンズの焦点位置を回転軸とした場合、右にパンニングすると画像の左側に黄色の棒が見えるようになりますが、左にパンニングしたときと同様に奥にある緑色の棒は黄色の棒に隠れて見えなくなります。この状態でパノラマ合成すれば、「ずれ」のないパノラマ写真を作ることができます。

 このようにレンズの焦点位置をカメラの回転軸にすると視差が生じなくなります。この視差が生じなくなる位置をノーパララックスポイント(no parallax point)やノーダルポイント(nodal point)と呼ぶそうです。ノーダルポイントは、レンズの焦点距離によって変わります。単焦点レンズは固定の位置、ズームレンズではそれぞれの焦点距離ごとに位置が変わってきます。

 長くなってきたので、続きは 次の記事に書きます。